広島高等裁判所 昭和39年(う)261号 判決
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〔判決理由〕所論は、被告人等組合員の行つた本件ピケツテイングは、団結権の擁護と、会社側の者と平和的話し合いの場をつくるため一時入場を阻止しようとしたものであるから、憲法第二八条に保障された団体行動権の正当な行使であり、これに対し実力をもつて突破しようとした原判示第一、第二の水馬義輝等非組合員の行為は団結権に対する侵害行為であり、これに対してスクラムを組んで阻止することは正当防衛行為であり、仮に相当性の点で疑問があるとしても過剰防衛行為である。しかるに弁護人の右主張を容れず、被告人等を有罪とした原判決は憲法第二八条の解釈適用を誤つた違法があるというのである。
よつて考察するに、憲法第二八条は勤労者の団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障しているが、同条は右のためには個人の自由権に抵触する行動をとることを無制限に認めるものであるとは解せられない。労働組合員が行うピケツテイングは言論による説得、または団結による示威等平和的な方法による限りはもとより違法ではないが、一方使用者、その利益代表者またはその他の非組合員は右の説得をきかなければならない義務はないものといわなければならない。本件において株式会社みづま工房社長水馬義輝、同技術部長水馬守その他の非組合員が就業のため同会社事務所に入所することは自由であり、被告人等ピケツテイング参加者は前記平和的説得の範囲を逸脱して実力をもつて右入所を阻止することは許されないものというべきところ、前記の原判示第一、第二の事実認定に引用した各証拠によれば、同各判示の被害者等非組合員は、同人等の入所を阻止するため同会社事務所入口にピケツテイングを張つていた被告人等労組員に対し、就業のため事務所内に入れてくれるよう要請したが、労組側においてきき入れず、あくまで入所を阻止するので、それを押し開いて入所しようと考え、右ピケツトラインに近づいたに過ぎないものであることが認められるから、右被害者等の行動を目して憲法第二八条により保障された被告人等の前記権利に対する侵害行為であるとすることはできない。してみると、被告人等の原判示第一、第二の所為に対しては刑法第三六条の正当防衛ないし過剰防衛の規定を適用する余地はないものというべく、従つてこれと同旨に出でた原審の判断は正当であつて、原判決には所論のような誤はない。この点に関する論旨も理由がない。(渡辺雄(転任のため署名押印できない) 高橋文恵 高橋正男)